負けるが勝ち
モニカ・ワドワ教授は、勝たないことが、勝つことよりずっと力になると主張します。彼女の研究によれば、人は勝った時でなく、もう少しで勝てそうな時に、最もやる気がみなぎるそうです。もう少しのところで負けると、頑張り続ける原動力をもらい、安易に勝利すると、モチベーションが下がる傾向があると言います。
栄光なる啓示
中世の神学者トマス・アクィナスは、神を追い求めて生きたいと願って苦難を耐えました。彼はドミニコ会という清貧な生活と学びと説教に専念する修道会に入りたかったのですが、それに反対する家族に1年間監禁されました。生涯を懸けて聖書と被造物を研究し、100巻近くの著書を記した後、神を強烈に体験しました。そして、今まで自分が書いてきたものは、まるで藁(わら)くずのようなものだ。このような栄光を体験したからには、もう書くことはできないと語り、その3カ月後に亡くなりました。
ありがたい本
私は美しい装丁の本に目がなく、蔵書は増えていくばかりです。しかし、全ての本を読破する時間も余裕もなく、多くの本が新品同様の美しい状態を保っています。エッセイストのジョン・アップダイクは、アメリカの古典『ウォールデン―森の生活』について、「聖書のように、敬意は払われるが読まれない」可能性があると語りました。聖書は、古典であり、異文化の中で書かれた書物なので、少々難しいのかもしれません。そのせいか、出番は日曜日の礼拝の時だけで、他の日は本棚を飾るだけになりがちです。
神の気前良さに応える
リディアは匿名で1万ドル(約150万円)を寄付されましたが、自分のためにはほとんど使わず、家族や同僚のために使ったり、被災者支援や慈善団体に気前良く寄付しました。彼女はそうとは知らずに、無条件で1万ドルを受け取った200人の反応を調査する研究に参加していたのです。この調査の結果、贈られたお金の3分の2以上が寄付されたことが分かりました。非営利団体TEDの代表クリス・アンダーソンは、この例を取り上げて「私たち人間は、太っ腹な行為には太っ腹な行為で応えるようにできている」と語りました。
真実のために偵察する
自分の間違いに気付かず、自己の正しさを信じる傾向が、人にはありますが、それは「兵士の思考」があるからだと、ジュリア・ガレフは自著で語ります。それは、自分が信じているものを正当化し、それを脅かすものから守ろうとする心理ですが、より有益な考え方は「偵察者の思考」だといいます。偵察の主眼は、脅威の排除ではなく、完全な真実の探求です。きれいごとではなく、不都合でも、不愉快でも、何がそこにあるのかを正直な目で正確に理解したいと思います。このような考え方の人は、生涯にわたって理解を深めていける謙虚な心を持っているといえます。
内面から変えられる
ロンドン西部の高層住宅グレンフェルタワーで発生した火災は、死者72名に上る大惨事でした。火の回りを早めた主な原因は、改修工事で採用された外装材と断熱材でした。外側はアルミでしたが、中心は非常に燃えやすいプラスチックでした。
忍耐強い愛
我が家のミスティークは、美しいふわふわの毛をした猫です。一緒に遊んだり、お腹をなでてあげたり、膝の上で眠らせたりしていると、数年前に出会ったあの猫だとは思えません。元々は野良猫で、痩せていて、人を恐れていました。けれども、毎日餌を与えるようになって、徐々に変わっていきました。そしてある日、ミスティークは私になでさせてくれました。その後の進展はご想像通りです。
信頼できる声
ニューヨークタイムズ紙のコラムニスト、ケビン•ルースは、新しいAI(人工知能)を試していて不安になりました。自動応答機能を使った2時間の会話の中で、AIは開発者の厳格なルールを破り、誤情報を広め、人間になりたいと語りました。ルースを愛していると告白し、妻と別れて一緒になるよう説得を試みました。彼は、AIが生き物ではなく感情も持っていないと知っていましたが、悪用されたら、どれほどの害をもたらすだろうと思いました。
言動に対する責任
学校がいじめの責任をすぐ認めることはほとんどありません。17歳の生徒が自殺した後、その名門高校が、彼を守ろうという配慮が「悲劇的に不十分だった」と認めたのは1年後でした。関係者は、自殺した生徒が執拗(しつよう)ないじめを受けていると知りながら、彼を守るためにほとんど何もしませんでした。現在、同校は、いじめの撲滅と生徒のメンタルヘルス向上に資する措置を講じようとしています。