「羊飼いたちが野宿をしながら、羊の群れの夜番をしていた。」(ルカ2:8)
うつの渦の中にいた頃、 私は強い疎外感を抱いていました。みんなは幸せそうだけれど、私は違う。みんなは楽しそうだけれど、私は苦しいだけ。人前では何とか自分を保っていましたが、明るい自分を演じれば演じるほど、心に惨めさが募っていく、そんな状況でした。もちろん、神がみんなを愛しておられることは知っていました。ただ、自分はその「みんな」に入っていないような気分でした。もがいてもあがいても振り払えない悲しみと孤独が、私にまとわり付いていました。
新約聖書時代のユダヤ人社会では、羊飼いは軽蔑されていました。皇帝の言う「全世界」に含まれず「住民」として数えられませんでした。宗教的にも疎外され、差別されていました。「全世界の住民登録」の勅令に従って先祖の町に帰郷していく人々を傍目に、いつも通り仕事をする羊飼いたちは胸中何を感じていたでしょうか。ところが、神はその彼らを心に留めておられました。見捨ても忘れもせず、それどころか、救い主の生誕に関わらせてくださったのです。そして彼らの喜びの証言が、聖書に収められました。