アメリカの詩人ワーズワースが1863年に書いた詩をもとにして作られた「クリスマスの鐘」という歌は、かなり変わったクリスマスソングです。その歌詞は、嬉しい楽しいクリスマスといったものではなく、嘆きと訴えです。「私は絶望して頭を垂れる/地に平和はない/憎しみは強く、地上に平和、人に善意と歌う歌をあざわらう」。しかし、この嘆きは希望に変わり、私たちを安心させてくれます。「神は死んでいない、眠ってもいない/悪者は滅び、正しい者が勝つ/地に平和、人に善意」

嘆きから湧き上がる希望は、聖書の詩篇にも見られます。例えば、詩篇43篇は、欺きと不正の人に虐げられているのに(1節)、神に見過ごされているようだ(2節)という嘆きで始まります。しかし、詩人はそこに留まりはせず、理解できないことがあっても、己が信じ続ける神を見上げます。そして「わがたましいよ なぜ おまえはうなだれているのか。なぜ 私のうちで思い乱れているのか。神を待ち望め。私はなおも神をほめたたえる。私の救い 私の神を」と歌うのです(5節)。

人生には悲しみが満ちているので、私たちは皆、たびたび、それを経験します。しかし、嘆きがあるからこそ希望の神と向き合う、と自ら決意するなら、涙に暮れつつも喜びの歌を歌うことができます。