エレミヤ書 6:1-8:23
エルサレムの攻城
1ベニヤミンの人々よ
エルサレムの中から避難せよ。
テコアで角笛を吹き鳴らし
ベト・ケレムに向かってのろしを上げよ。
災いと大いなる破壊が北から迫っている。
2美しく、快楽になれた女、娘シオンよ
わたしはお前を滅ぼす。
3羊飼いが、その群れと共にやって来る。
彼女に向かって周囲に天幕を張り
それぞれに、草を食い尽くす。
4シオンに対して戦闘を開始せよ。
立て、昼の間に攻め上ろう。
大変だ、日が傾き、夕日の影が伸びてきた。
5立て、夜襲をかけよう。
城郭を破壊しよう。
6まことに、万軍の主はこう言われる。
「木を切り、土を盛り
エルサレムに対して攻城の土塁を築け。
彼女は罰せられるべき都
その中には抑圧があるのみ。
7泉の水が湧くように
彼女の悪は湧き出る。
不法と暴力の叫びが聞こえてくる。
病と傷は、常にわたしの前にある。
8エルサレムよ、懲らしめを受け入れよ。
さもないと、わたしはお前を見捨て
荒れ果てて人の住まない地とする。」
9万軍の主はこう言われる。
「ぶどうの残りを摘むように
イスラエルの残りの者を摘み取れ。
ぶどうを摘む者がするように
お前は、手をもう一度ぶどうの枝に伸ばせ。」
10誰に向かって語り、警告すれば
聞き入れるのだろうか。
見よ、彼らの耳は無割礼で
耳を傾けることができない。
見よ、主の言葉が彼らに臨んでも
それを侮り、受け入れようとしない。
11主の怒りでわたしは満たされ
それに耐えることに疲れ果てた。
「それを注ぎ出せ
通りにいる幼子、若者の集いに。
男も女も、長老も年寄りも必ず捕らえられる。
12家も畑も妻もすべて他人の手に渡る。
この国に住む者に対して
わたしが手を伸ばすからだ」と主は言われる。
13「身分の低い者から高い者に至るまで
皆、利をむさぼり
預言者から祭司に至るまで皆、欺く。
14彼らは、わが民の破滅を手軽に治療して
平和がないのに、『平和、平和』と言う。
15彼らは忌むべきことをして恥をさらした。
しかも、恥ずかしいとは思わず
嘲られていることに気づかない。
それゆえ、人々が倒れるとき、彼らも倒れ
わたしが彼らを罰するとき
彼らはつまずく」と主は言われる。
16主はこう言われる。
「さまざまな道に立って、眺めよ。
昔からの道に問いかけてみよ
どれが、幸いに至る道か、と。
その道を歩み、魂に安らぎを得よ。」
しかし、彼らは言った。
「そこを歩むことをしない」と。
17わたしは、「あなたたちのために見張りを立て
耳を澄まして角笛の響きを待て」と言った。
しかし、彼らは言った。
「耳を澄まして待つことはしない」と。
18「それゆえ、国々よ、聞け。
わたしが彼らにしようとすることを知れ。
19この地よ、聞け。
見よ、わたしはこの民に災いをもたらす。
それは彼らのたくらみが結んだ実である。
彼らがわたしの言葉に耳を傾けず
わたしの教えを拒んだからだ。
20シェバから持って来た乳香や
はるかな国からの香水萱が
わたしにとって何の意味があろうか。
あなたたちの焼き尽くす献げ物を喜ばず
いけにえをわたしは好まない。」
21それゆえ、主はこう言われる。
「見よ、わたしはこの民につまずきを置く。
彼らはそれにつまずく。
父も子も共に、隣人も友も皆、滅びる。」
22主はこう言われる。
「見よ、一つの民が北の国から来る。
大いなる国が地の果てから奮い立って来る。
23弓と投げ槍を取り、残酷で、容赦しない。
海のとどろくような声をあげ、馬を駆り
戦いに備えて武装している。
娘シオンよ、あなたに向かって。」
24我々はその知らせを聞き、手の力は抜けた。
苦しみに捕らえられ
我々は産婦のようにもだえる。
25「野に出るな、道を行くな。
敵は剣を取り、恐怖が四方から迫る。
26わが民の娘よ、粗布をまとい
灰を身にかぶれ。
独り子を失ったように喪に服し
苦悩に満ちた嘆きの声をあげよ。
略奪する者が、突如として我々を襲う。」
27わたしはあなたをわが民の中に
金を試す者として立てた。
彼らの道を試し、知るがよい。
28彼らは皆、道を外れ、中傷して歩く。
彼らは皆、青銅や鉄の滓
罠を仕掛けて人を滅ぼす者だ。
29鉛はふいごで起こした火に溶ける。
彼らも火で試されたが、空しかった。
彼らの悪は取り除かれることがなかった。
30捨てられた銀の滓、と彼らは呼ばれる。
主が彼らを捨てられたからだ。
神殿での預言
1主からエレミヤに臨んだ言葉。
2主の神殿の門に立ち、この言葉をもって呼びかけよ。そして、言え。
「主を礼拝するために、神殿の門を入って行くユダの人々よ、皆、主の言葉を聞け。 3イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。お前たちの道と行いを正せ。そうすれば、わたしはお前たちをこの所に住まわせる。 4主の神殿、主の神殿、主の神殿という、むなしい言葉に依り頼んではならない。 5-6この所で、お前たちの道と行いを正し、お互いの間に正義を行い、寄留の外国人、孤児、寡婦を虐げず、無実の人の血を流さず、異教の神々に従うことなく、自ら災いを招いてはならない。 7そうすれば、わたしはお前たちを先祖に与えたこの地、この所に、とこしえからとこしえまで住まわせる。 8しかし見よ、お前たちはこのむなしい言葉に依り頼んでいるが、それは救う力を持たない。 9盗み、殺し、姦淫し、偽って誓い、バアルに香をたき、知ることのなかった異教の神々に従いながら、 10わたしの名によって呼ばれるこの神殿に来てわたしの前に立ち、『救われた』と言うのか。お前たちはあらゆる忌むべきことをしているではないか。 11わたしの名によって呼ばれるこの神殿は、お前たちの目に強盗の巣窟と見えるのか。そのとおり。わたしにもそう見える、と主は言われる。
12シロのわたしの聖所に行ってみよ。かつてわたしはそこにわたしの名を置いたが、わが民イスラエルの悪のゆえに、わたしがそれをどのようにしたかを見るがよい。 13今や、お前たちがこれらのことをしたから――と主は言われる――そしてわたしが先に繰り返し語ったのに、その言葉に従わず、呼びかけたのに答えなかったから、 14わたしの名によって呼ばれ、お前たちが依り頼んでいるこの神殿に、そしてお前たちと先祖に与えたこの所に対して、わたしはシロにしたようにする。 15わたしは、お前たちの兄弟である、エフライムの子孫をすべて投げ捨てたように、お前たちをわたしの前から投げ捨てる。」
16あなたはこの民のために祈ってはならない。彼らのために嘆きと祈りの声をあげてわたしを煩わすな。わたしはあなたに耳を傾けない。 17ユダの町々、エルサレムの巷で彼らがどのようなことをしているか、あなたには見えないのか。 18子らは薪を集め、父は火を燃やし、女たちは粉を練り、天の女王のために献げ物の菓子を作り、異教の神々に献げ物のぶどう酒を注いで、わたしを怒らせている。 19彼らはわたしを怒らせているのか――と主は言われる――むしろ、自らの恥によって自らを怒らせているのではないか。 20それゆえ、主なる神はこう言われる。見よ、わたしの怒りと憤りが、この所で、人間、家畜、野の木、地の実りに注がれる。それは燃え上がり、消えることはない。 21イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。お前たちの焼き尽くす献げ物の肉を、いけにえの肉に加えて食べるがよい。 22わたしはお前たちの先祖をエジプトの地から導き出したとき、わたしは焼き尽くす献げ物やいけにえについて、語ったことも命じたこともない。 23むしろ、わたしは次のことを彼らに命じた。「わたしの声に聞き従え。そうすれば、わたしはあなたたちの神となり、あなたたちはわたしの民となる。わたしが命じる道にのみ歩むならば、あなたたちは幸いを得る。」 24しかし、彼らは聞き従わず、耳を傾けず、彼らのかたくなで悪い心のたくらみに従って歩み、わたしに背を向け、顔を向けなかった。 25お前たちの先祖がエジプトの地から出たその日から、今日に至るまで、わたしの僕である預言者らを、常に繰り返しお前たちに遣わした。 26それでも、わたしに聞き従わず、耳を傾けず、かえって、うなじを固くし、先祖よりも悪い者となった。
27あなたが彼らにこれらすべての言葉を語っても、彼らはあなたに聞き従わず、呼びかけても答えないであろう。 28それゆえあなたは彼らに言うがよい。「これは、その神、主の声に聞き従わず、懲らしめを受け入れず、その口から真実が失われ、断たれている民だ。」
29「お前の長い髪を切り、それを捨てよ。
裸の山々で哀歌をうたえ。
主を怒らせたこの世代を
主は退け、見捨てられた。」
30まことに、ユダの人々はわたしの目の前で悪を行った、と主は言われる。わたしの名によって呼ばれるこの神殿に、彼らは憎むべき物を置いてこれを汚した。 31彼らはベン・ヒノムの谷にトフェトの聖なる高台を築いて息子、娘を火で焼いた。このようなことをわたしは命じたこともなく、心に思い浮かべたこともない。 32それゆえ、見よ、もはやトフェトとかベン・ヒノムの谷とか呼ばれることなく、殺戮の谷と呼ばれる日が来る、と主は言われる。そのとき、人々はもはや余地を残さぬまで、トフェトに人を葬る。 33この民の死体は空の鳥、野の獣の餌食となる。それを追い払う者もない。 34わたしはユダの町々とエルサレムの巷から、喜びの声と祝いの声、花婿の声と花嫁の声を絶つ。この地は廃虚となる。
1そのとき、と主は言われる。ユダのもろもろの王の骨、高官の骨、祭司の骨、預言者の骨、そしてエルサレムの住民の骨が、墓から掘り出される。 2それは、彼らが愛し、仕え、その後に従い、尋ね求め、伏し拝んだ太陽や月、天の万象の前にさらされ、集められることも葬られることもなく、地の面にまき散らされて肥やしとなる。 3わたしが他のさまざまな場所に追いやった、この悪を行う民族の残りの者すべてにとって、死は生よりも望ましいものになる、と万軍の主は言われる。
民の背信
4彼らに言いなさい。
主はこう言われる。
倒れて、起き上がらない者があろうか。
離れて、立ち帰らない者があろうか。
5どうして、この民エルサレムは背く者となり
いつまでも背いているのか。
偽りに固執して
立ち帰ることを拒む。
6耳を傾けて聞いてみたが
正直に語ろうとしない。
自分の悪を悔いる者もなく
わたしは何ということをしたのかと
言う者もない。
馬が戦場に突進するように
それぞれ自分の道を去って行く。
7空を飛ぶこうのとりもその季節を知っている。
山鳩もつばめも鶴も、渡るときを守る。
しかし、わが民は主の定めを知ろうとしない。
8どうしてお前たちは言えようか。
「我々は賢者といわれる者で
主の律法を持っている」と。
まことに見よ、書記が偽る筆をもって書き
それを偽りとした。
9賢者は恥を受け、打ちのめされ、捕らえられる。
見よ、主の言葉を侮っていながら
どんな知恵を持っているというのか。
10それゆえ、わたしは彼らの妻を他人に渡し
彼らの畑を征服する者に渡す。
身分の低い者から高い者に至るまで
皆、利をむさぼり
預言者から祭司に至るまで皆、欺く。
11彼らは、おとめなるわが民の破滅を
手軽に治療して
平和がないのに「平和、平和」と言う。
12彼らは忌むべきことをして恥をさらした。
しかも、恥ずかしいとは思わず
嘲られていることに気づかない。
それゆえ、人々が倒れるとき、彼らも倒れ
彼らが罰せられるとき、彼らはつまずくと
主は言われる。
13わたしは彼らを集めようとしたがと
主は言われる。
ぶどうの木にぶどうはなく
いちじくの木にいちじくはない。
葉はしおれ、わたしが与えたものは
彼らから失われていた。
敵の攻撃
14何のために我々は座っているのか。
集まって、城塞に逃れ、黙ってそこにいよう。
我々の神、主が我々を黙らせ
毒の水を飲ませられる。
我々が主に罪を犯したからだ。
15平和を望んでも、幸いはなく
いやしのときを望んでも、見よ、恐怖のみ。
16ダンから敵の軍馬のいななきが聞こえる。
強い馬の鋭いいななきで、大地はすべて揺れ動く。
彼らは来て、地とそこに満ちるもの
都とそこに住むものを食い尽くす。
17わたしはお前たちの中に蛇や蝮を送る。
彼らにはどのような呪文も役に立たない。
彼らはお前たちをかむ、と主は言われる。
18わたしの嘆きはつのり
わたしの心は弱り果てる。
19見よ、遠い地から娘なるわが民の
叫ぶ声がする。
「主はシオンにおられないのか
シオンの王はそこにおられないのか。」
なぜ、彼らは偶像によって
異教の空しいものによって
わたしを怒らせるのか。
20刈り入れの時は過ぎ、夏は終わった。
しかし、我々は救われなかった。
21娘なるわが民の破滅のゆえに
わたしは打ち砕かれ、嘆き、恐怖に襲われる。
22ギレアドに乳香がないというのか
そこには医者がいないのか。
なぜ、娘なるわが民の傷はいえないのか。
23わたしの頭が大水の源となり
わたしの目が涙の源となればよいのに。
そうすれば、昼も夜もわたしは泣こう
娘なるわが民の倒れた者のために。