エレミヤ書 51:1-52:34
1主はこう言われる。
「わたしはバビロンに対し
レブ・カマイ(カルデア)の住民に向かって
滅びの風を巻き起こす。
2わたしはバビロンに外敵を送る。
彼らはバビロンをふるいにかけ
その国土を裸にする。
災いの日に、彼らは四方からバビロンに迫る。」
3弓を射る者に弓を張らせ
鎧を着けて身構えさせよ。
バビロンの若者たちを惜しんではならない。
その軍をすべて滅ぼし尽くせ。
4カルデア人の国には、殺された者が
路上には、刺された者が倒れる。
5イスラエルとユダは
その神、万軍の主に見捨てられてはいない。
カルデア人の国には罪が満ちている
イスラエルの聖なる方に背いた罪が。
6お前たちはバビロンの中から逃げ
おのおの自分の命を救え。
バビロンの悪のゆえに滅びるな。
今こそ、主が復讐される時
主はバビロンに仇を返される。
7バビロンは主の手にある金の杯
これが全世界を酔わせた。
国々はその酒を飲み
そのゆえに、国々は狂った。
8にわかに、バビロンは倒れ、砕かれた。
バビロンのために嘆け。
その傷に乳香を塗れ。
いえるかもしれない。
9我々はバビロンをいやそうとした。
しかし、いやされはしなかった。
バビロンを捨てて、おのおの自分の国へ帰ろう。
バビロンの審判は天に達し、雲にまで届いた。
10主は我々の正しさを明らかにされた。
さあ、我々はシオンで
我らの神、主の御業を語り告げよう。
11矢を研ぎ澄まし、盾を用意せよ。
主はメディアの王たちの霊を奮い起こさせる。
バビロンに対する主の定めは滅ぼすこと。
これこそ主の復讐
主の神殿の復讐だ。
12バビロンの城壁に向かって旗を立て
見張りを強化せよ。
見張りの者を立て、伏兵を置け。
主は思い定め、それを実行される
バビロンの住民に告げられたことを。
13豊かな水の傍らに住み、財宝に富む者よ。
お前の終わりが来た。命の糸は断たれる。
14万軍の主は、御自分にかけて誓われた。
「わたしは必ず、いなごの大軍のような人々で
お前を満たす。
彼らはお前を攻め、叫び声をあげる。」
15御力をもって大地を造り
知恵をもって世界を固く据え
英知をもって天を広げられた方。
16主が御声を発せられると天の大水はどよめく。
地の果てから雨雲を湧き上がらせ
稲妻を放って雨を降らせ
風を倉から送り出される。
17人は皆、愚かで知識に達しえない。
金細工人は皆、偶像のゆえに辱められる。
鋳て造った像は欺きにすぎず
霊を持っていない。
18彼らは空しく、また嘲られるもの。
裁きの時が来れば滅びてしまう。
19ヤコブの分である神はこのような方ではない。
万物の創造者であり
ヤコブはその方の嗣業の民である。
その御名は万軍の主。
20お前はわたしの鎚、わたしの武器であった。
お前によって、わたしは国々を砕き
お前によって、諸王国を滅ぼした。
21お前によって、軍馬と騎兵を砕き
お前によって、戦車とその操縦者を砕いた。
22お前によって、男も女も砕き
お前によって、老いも若きも砕き
お前によって、若者もおとめも砕いた。
23お前によって、羊飼いと群れを砕き
お前によって、農夫と耕す牛を砕き
お前によって、総督と長官を砕いた。
24しかし、わたしはバビロンと
カルデアの全住民に対し
お前たちの目の前で報復する。
彼らがシオンで行ったあらゆる悪に対してと
主は言われる。
25滅びの山よ、見よ、わたしはお前に立ち向かうと
主は言われる。
全世界を滅ぼす者よ
わたしは手を伸ばしてお前を捕らえ
断崖から転がして落とし、燃え尽きた山にする。
26お前の石を取って隅の石とする者はないし
土台の石とする者もない。
お前はとこしえに荒れ果てたままだと
主は言われる。
27大地に旗を立て、国々で角笛を吹き鳴らせ。
バビロンを撃つために国々を聖別し
諸王国を呼び集めよ
アララト、ミンニ、そしてアシュケナズを。
指揮官を立て、バビロンを攻めよ。
群がるいなごのように軍馬を上らせよ。
28バビロンを撃つために、国々を聖別せよ
メディアの諸王国を、その総督とすべての長官
また、その支配下の全土を。
29大地は震え、ねじれる。
主の定めがバビロンに成就し
バビロンの国を人の住まない廃虚とされるから。
30バビロンの勇士たちは戦いをやめ
砦に座り込む。
彼らの力はうせ、女のようになる。
バビロンの家屋は焼かれ、かんぬきは砕かれる。
31伝令は走って、次の伝令に伝え
使者は次の使者へ取り次ぎ
都が隅々まで占領されたことを
バビロンの王に知らせる。
32渡し場は次々と奪われ
沼地の葦は火で焼き払われ
兵士たちはおびえる。
33イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。
娘バビロンは、麦の打ち場のようだ。
今や、彼女は踏みつけられ
間もなく、彼女を取り入れる時が来る。
34バビロンの王ネブカドレツァルは
わたしに食いつき、当惑させ
竜のようにわたしを呑み込み
わたしのうまい肉で腹を満たし
わたしを空の皿のようにして洗い清めた。
35「わたしと、わたしの肉親が受けた暴虐が
バビロンの上にふりかかるように」と
シオンの女たちは言い
「わたしの血の恨みが
カルデアの住民にふりかかるように」と
エルサレムは言う。
36それゆえ、主はこう言われる。
見よ、わたしはお前の訴えを取り上げ
お前の仇を報いる。
わたしはバビロンの海を干上がらせ
泉を涸らす。
37バビロンは、瓦礫の山
ジャッカルの住みかとなり
恐怖と嘲りの的となり
住む者はひとりもいなくなる。
38彼らは一斉に若獅子のようにうなり
獅子の子のようにほえる。
39わたしは、たけりたつ彼らに
宴を設けて酔わせる。
彼らは泥酔して、よろめき
いつまでも眠り続けて目を覚まさないと
主は言われる。
40わたしは、彼らを小羊のように
また雄羊や雄山羊のように
屠り場に引いて行く。
41シェシャク(バビロン)は占領された。
全世界の賛美の的であったものが捕らえられた。
バビロンは国々の間に恐怖の的となった。
42混沌の海がバビロンに襲いかかり
バビロンは高波のとどろきに覆われた。
43町々は廃虚となり
乾ききった地、荒れ地となる。
そこは住む者のない土地となり
人の子ひとり通らぬ所となる。
44わたしはバビロンでベルを罰し
彼が呑み込んだものを口から吐き出させる。
国々が川の流れのように
そこに集まることはもはやない。
バビロンの城壁は倒れた。
45わが民よ、その中から出よ。
おのおの自分の命を救え
主の激しい怒りを逃れて。
46お前たちは心挫けてはならない。この地で耳にするうわさを恐れるな。一つのうわさがこの年に来れば、別のうわさが次の年に来る。この地に不法が行われ、支配者と支配者が争うなど、と。
47それゆえ、見よ、その日が来れば
わたしはバビロンの偶像を罰する。
全土はうろたえ
殺された者は皆、国のただ中に倒れる。
48天と地と、その中にあるすべてのものは
バビロンの滅亡を喜び歌う。
滅ぼす者が北から来るからだ、と主は言われる。
49バビロンもまた、必ず倒れる
イスラエルの殺された人々のゆえに。
バビロンのゆえに、世界の至るところで
人々が殺されたのだから。
50剣を逃れた者らよ。
行け、立ち止まるな。
遠くから主を思い起こし
エルサレムを心に留めよ。
51我々はののしりを聞いて当惑している。
恥辱が我々の顔を覆っている。
外敵が主の家の聖域に押し入ったからだ。
52それゆえ、見よ、その日が来ればと
主は言われる。
わたしはバビロンの偶像を罰する。
国の至るところで殺された者が呻く。
53たとえ、バビロンが天に上っても
高いやぐらの守りを固めても
わたしのもとから滅ぼす者が来ると
主は言われる。
54バビロンから叫びの声が聞こえ
カルデア人の地から大いなる破壊の音がする。
55主がバビロンを滅ぼし
大音響を静められる。
波のうねりが大水のようにとどろき
どよめきの音が響きわたる。
56滅ぼす者がバビロンに攻めて来た。
勇士たちは捕らえられ、弓は折られた。
まことに主は仇を返される神
主は必ず報復される。
57わたしはバビロンの高官、知者、総督、長官、勇士らを酔わせる。彼らはいつまでも眠り続けて目を覚ますことはない、とその御名を万軍の主という王が言われる。
58万軍の主はこう言われる。
バビロンの厚い城壁は無残に崩され
高い城門は火で焼かれる。
今や、多くの民の労苦はむなしく消え
諸国民の辛苦は火中に帰し、人々は力尽きる。
バビロン滅亡の巻物
59ユダの王ゼデキヤの第四年に、マフセヤの孫でネリヤの子であるセラヤが、宿営の長として王と共にバビロンに行ったとき、預言者エレミヤはセラヤに次のように命じた。 60エレミヤはバビロンに襲いかかるすべての災いを一巻の巻物に記した。そこに書かれた言葉はすべて、バビロンに関するものであった。
61エレミヤはセラヤに言った。あなたがバビロンに到着したとき、注意してこの言葉を朗読し、 62そして言いなさい。「主よ、あなた御自身がこの場所について、これを断ち滅ぼし、人も獣も住まない永久の廃虚にすると語られました」と。
63この巻物の朗読を終えたとき、巻物に石を結び付け、ユーフラテス川に投げ込み、 64そして言いなさい。「このように、バビロンは沈む。わたしがくだす災いのゆえに、再び立ち上がることはない。人々は力尽きる」と。
ここまでがエレミヤの言葉である。
エルサレムの陥落と捕囚
1ゼデキヤは二十一歳で王となり、十一年間エルサレムで王位にあった。その母は名をハムタルといい、リブナ出身のイルメヤの娘であった。 2彼はヨヤキムが行ったように、主の目に悪とされることをことごとく行った。 3エルサレムとユダは主の怒りによってこのような事態になり、ついにその御前から投げ捨てられることになった。ゼデキヤはバビロンの王に反旗を翻した。
4ゼデキヤの治世、第九年十月十日に、バビロンの王ネブカドレツァルは全軍を率いてエルサレムに到着し、陣を敷き、周りに堡塁を築いた。 5都は包囲され、ゼデキヤ王の第十一年に至った。 6四月九日に、都の中で飢えが厳しくなり、国の民の食糧が尽き、 7都の一角が破られた。戦士たちは皆逃げ出した。彼らは夜中に、カルデア人が都を取り巻いていたが、王の園に近い二つの城壁の間にある門を通って都を出、アラバへ向かって行った。 8カルデア軍は王の後を追い、エリコの荒れ地でゼデキヤに追いついた。王の軍隊はすべて王を離れ去ってちりぢりになった。 9王は捕らえられ、ハマト地方のリブラにいるバビロンの王のもとに連れて行かれ、裁きを受けた。 10バビロンの王は、ゼデキヤの目の前で彼の王子たちを殺し、また、ユダの将軍たちもすべてリブラで殺した。 11その上で、バビロンの王はゼデキヤの両眼をつぶし、青銅の足枷をはめ、彼をバビロンに連れて行き、死ぬまで牢獄に閉じ込めておいた。
12五月十日、バビロンの王ネブカドレツァルの第十九年のこと、バビロンの王の側近である親衛隊の長ネブザルアダンがエルサレムに来て、 13主の神殿、王宮、エルサレムの家屋をすべて焼き払った。大いなる家屋もすべて、火を放って焼き払った。 14また、親衛隊の長と共に来たカルデア人は、軍をあげてエルサレムの周囲の城壁をすべて取り壊した。 15貧しい民の一部、民のうち都に残っていたほかの者、バビロンの王に投降した者、ほかの技師たちは親衛隊の長ネブザルアダンによって、捕囚とされ、連れ去られた。 16この地の貧しい民の一部は、親衛隊の長ネブザルアダンによってぶどう畑と耕地にそのまま残された。
17カルデア人は主の神殿の青銅の柱、台車、主の神殿にあった青銅の「海」を砕いて、その青銅をことごとくバビロンへ運び去り、 18壺、十能、芯切り鋏、鉢、柄杓など、祭儀用の青銅の器をことごとく奪い取った。 19また親衛隊の長は、小鉢、火皿、鉢、壺、燭台、柄杓、水差しなど、金製品も銀製品もすべて奪い取った。 20ソロモンが主の神殿のために造らせた二本の柱、一つの「海」、それを支える青銅の牛十二頭および台車についていえば、これらすべてのものの青銅の重量は量りきれなかった。 21柱についていえば、一本の柱の高さは十八アンマ、周囲は十二アンマ、空洞で厚みは指四本分であった。 22その上に青銅の柱頭があり、一方の柱頭の高さは五アンマ、柱頭の周りには格子模様の浮き彫りとざくろがあって、このすべてが青銅であった。もう一本の柱も同様に出来ていて、ざくろもそうであった。 23九十六個のざくろがぶら下がっており、格子模様の浮き彫りの周囲にあるざくろは全部で百個であった。
24親衛隊の長は祭司長セラヤ、次席祭司ツェファンヤ、入り口を守る者三人を捕らえた。 25また、彼は戦士の監督をする宦官一人、都にいた王の側近七人、国の民の徴兵を担当する将軍の書記官、および都にいた国の民六十人を都から連れ去った。 26親衛隊の長ネブザルアダンは彼らを捕らえて、リブラにいるバビロンの王のもとに連れて行った。 27バビロンの王はハマト地方のリブラで彼らを打ち殺した。こうしてユダは自分の土地を追われて捕囚となった。
28ネブカドレツァルが捕囚として連れ去った民の数をここに記すと、第七年に連れ去ったユダの人々が三千二十三人、 29ネブカドレツァルの第十八年にエルサレムから連れ去った者が八百三十二人であった。 30ネブカドレツァルの第二十三年には、親衛隊の長ネブザルアダンがユダの人々七百四十五人を捕囚として連れ去った。総数は四千六百人である。
ヨヤキン王の名誉回復
31ユダの王ヨヤキンが捕囚となって三十七年目の十二月二十五日に、バビロンの王エビル・メロダクは、その即位の年にユダの王ヨヤキンに情けをかけ、彼を出獄させた。 32バビロンの王は彼を手厚くもてなし、バビロンで共にいた王たちの中で彼に最も高い位を与えた。 33ヨヤキンは獄中の衣を脱ぎ、生きている間、毎日欠かさず王と食事を共にすることとなった。 34彼は生きている間、死ぬ日まで毎日、日々の糧を常にバビロンの王から支給された。