複雑な心境
私たち夫婦は結婚式の当日、実に複雑な心境でした。誤解しないでください。35年以上たった今でも、あれは素晴らしい出来事だったと言えます。けれども、結婚式のわずか数週間前に、妻の母親ががんで亡くなったのです。妻の叔母が「花嫁の母」の代役を立派に果たしてくれました。しかし、私たちは幸福の真っただ中にありながら、明らかに違和感がありました。母の不在が、すべてに影響を与えていたのです。
クリスティングル
チェコ共和国などの国々では、「クリスティングル」を立ててクリスマスを祝います。「クリスティングル」とはオレンジの真ん中にろうそくを立てたものですが、オレンジは世界、ろうそくはキリストを象徴しています。オレンジには赤いリボンが巻かれていて、それはキリストの血潮を表しています。また、4本の爪楊枝にドライフルーツが付けられ、リボンの上からオレンジに刺されていますが、これは大地の実を表します。
御子が与えられる
ヘンデルのオラトリオ「メサイア」で好きな部分は、第1部の「ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる」という喜びに満ちた部分です。特に「わたしたちは御子をさずかるのだ」と合唱が盛り上がっていくところが大好きです。この歌詞はもちろん、イザヤ書9章6節の「ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。ひとりの男の子が、私たちに与えられる」から引用されています。ヘンデルの荘厳な音楽は、人の姿になって最初のクリスマスに来てくださった御子を敬愛し、感謝して、天に向かって上っていきます。
極度の恐れ
子ども聖歌隊は何週間も練習をして、ついに恒例のクリスマスミュージカルの本番を迎えました。衣装を着た子どもたちが礼拝堂に入場してきました。そのときです。後方のドアのあたりで大声が聞こえました。私たち夫婦が振り向くと、恐怖で顔を引きつらせた息子のマットが叫んでいました。1983年のことです。まだ幼かった彼は、必死でドアの取っ手につかまり、怯えきった表情で泣いていました。彼はステージに上がりたくなかったのです。かなり説得しましたが、ダメでした。ついに日曜学校の教師は、ステージに上がらなくてもいいと言い、息子は私たちの隣に座りました。しばらくすると、彼の恐怖感は収まりました。
水のある所
東アフリカは地球上で最も乾燥した地域ですから、ケニアの首都の「ナイロビ」という名前は、大きな意味を持っています。この名前の由来は、マサイ語の「冷たい水」という言葉です。また、文字通りの意味は、「水のある所」です。
本当の思いやり
ファミリーキャンプの最初の夜、キャンプ場のスタッフが一週間の予定を説明してから、「ご意見やご質問はありますか」と尋ねました。すると、ひとりの少女が立ち上がり、自分の弟を助けてほしいと必死に頼みました。彼女の弟は特別な援助が必要で、家族の負担は小さくないそうです。両親が大変なので、キャンプの期間、みんなで弟から目を離さないようにしてほしい、と言いました。彼女が家族を心から思いやって頼んでいるのは明らかでした。日が経つにつれて、キャンプに集ったそれぞれの家族は、絶妙のタイミングでこの家族に手を貸すようになっていき、その様子は素晴らしいものでした。
きまりが悪い時
パトカーの回転灯が回っていたので、交通違反の車が道路わきに止められていることに気づきました。違反キップの綴りを手に警察官がパトカーに戻っていったとき、その車の運転席で、きまり悪そうに途方に暮れているドライバーが見えました。彼女は知り合いに気づかれるのを恐れてか、顔を手で覆っていました。それを見て、自らの過ちとその報いを人目にさらされるのは、実にきまり悪いものだと改めて気づきました。
じっとしていなさい
映画「炎のランナー」で知られるエリック・リデルは、1924年にパリで催されたオリンピックで金メダルを獲得し、その後、宣教師となって中国に赴きました。数年後、第二次世界大戦が勃発すると、リデルは家族を安全なカナダへ避難させましたが、自らは中国に残りました。日本軍が侵攻すると、リデルたち宣教師は日本の捕虜収容所に拘禁されました。そして数カ月後、脳腫瘍だと診断されたのです。
素晴らしい!
飛行機が着陸態勢に入ると、客室乗務員が到着案内をしました。今日1,000回目のアナウンスかと思うほど、心の込もっていない疲れた声です。着陸後の段取りを長々と述べてから、その疲れて乾いた一本調子のまま「素晴らしい一日を」と言ってマイクを置きました。その声のトーンと声が発した言葉は、あまりにもかけ離れていました。彼女は「素晴らしい」と言ったのですが、その声から素晴らしさは、みじんも感じられませんでした。