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Lawrence Darmani

Lawrence Darmani

ローレンス・ダーマニ氏は、 ガーナ人作家です。 彼の処女作 「悲しみの子」は、 英連邦作家賞アフリカ部門にて新人賞を受賞しました。 ダーマニ氏は家族とともにガーナ ・ アクラに住んでおり、 Step Publishers の代表および編集者です。

寄稿一覧 Lawrence Darmani

満足をくれるパン

小学生のときに「主の祈り」を暗唱できるようになりました。そして、「私たちの日ごとのパンをきょうもお与えください」(マタ6:11参照)というくだりでは、本当にパンを思い浮かべました。我が家にパンがあるのは、父が町に行ったときだけでしたから、毎日パンを食べられるように祈ることは、私にとって理にかなうことでした。

忘れられてはいない

長女のククアは、母の50歳の誕生日に集まった多くの人を前に、母は多くのことをしてくれたと語りました。子どもの頃は厳しい時代で、お金がありませんでした。シングルマザーだった母は自分を犠牲にし、大切な宝石や着物などを売ってククアを高校に行かせてくれました。どんなに苦しくても、決して自分たちを捨てなかったと彼女は涙ながらに感謝しました。

カメレオン

カメレオンと聞けば、環境によって身体の色を変える能力を思い浮かべる人がほとんどですが、実は、他にも面白い特徴があります。私はカメレオンが歩いているのを見たことがありますが、どうやって目的地に到達するのだろうと思いました。カメレオンは、嫌々動かしているかのようにゆっくり片足を上げると、「気が変わった」と言わんばかりにピタッと止まり、それからまたゆっくりと足を伸ばして、地面が崩れることを恐れているがごとく、そっと着地します。それで、「カメレオン教会員にならないでください」と誰かが言うのを聞いて、私は笑ってしまいました。「今日は教会に行こうかな。いや、来週にしよう。うう~ん、もうしばらく待ったほうがよいかな…。」

移行

ガーナではよく、死亡告示を掲示板やコンクリート塀に貼ります。「早すぎた死」、「大往生」、「衝撃」などと見出しをつけて家族の逝去を伝え、葬儀を告知します。そんな中に「移行」という見出しがありました。向こうの世界があると示しているのです。

立ち去るべき時

年をとってからキリストを信じた父が教えてくれた誘惑の克服法は、その場を離れる、というものでした。例えば、隣人と意見が食い違って口げんかになりそうなら、その場をしばらく離れて、けんかの誘惑を避けるというものです。また、友人たちが「ピト」という強い地ビールを注文したときは、「また別の日に」と挨拶してその場を立ち去りました。父は昔、お酒の問題があったので、もう飲まないことにしていたからです。

神の前に出る

電話やEメールがない時代、電報は最も速い通信手段でした。しかし、それは緊急時だけに使われ、大抵は悪い知らせを届けるものでした。「電報配達人は悪い知らせを持ってくる」と、ことわざができたほどです。

老い支度

さり気なく「おばさん、調子はどう」と尋ねると、関節痛を患う84歳の友人は、「老いることはきついわ」と小さな声で言いつつも、「でも神は、ずっと良くしてくださったから…」と真心から語りました。

心に刻む

私の家の近所は宗教的な言葉でいっぱいです。「神の愛」という名前の本屋があったり、「神の恵みによって」と書かた小型バスがあったりします。看板や門柱にも、そのたぐいの文言が書かれています。ある日、「近づくな!天使が警護している」というステッカーを貼ったベンツを見たときは、思わず笑ってしまいました。

仕える指導者

伝統的なアフリカ社会では、後継者選びは重大な問題です。国王の場合は特にそうです。王族であることは当然で、その上、強く勇敢で、聡明でなければなりません。人々に仕えるリーダーか、それとも力で押さえつけるリーダーか、候補者はじっくり審査されます。王は人々を指導すると同時に、人々に仕える人でなければなりません。