シェイクスピアは侮辱の名手です。俳優バリー・クラフトの著書は、シェイクスピアの戯曲の中の巧妙でやんわりした侮辱表現を集めています。日本の子どもの口げんかの決まり文句に「お前の母ちゃんでべそ」というものがありますが、そういった遠回しで辛辣(しんらつ)な悪口の数々です。

この本は屈託がなく面白いのですが、古代モアブの王バラクの場合は問題でした。彼はイスラエルを侮辱するだけでなく「今来て、私のためにこの民をのろってもらいたい」と占い師バラムに金を渡したのです(民22:6)。しかしバラムは何度もイスラエルを祝福して王を激怒させました(24:10)。バラムの祝福の一つは「私には彼が見える。しかし今のことではない。私は彼を見つめる。しかし近くのことではない」(24:17)という預言でした。明らかにその人はまだいません。一体、それは誰でしょう。「ヤコブから一つの星が進み出る。イスラエルから一本の杖が起こり」(17節)と続くことばにヒントがあります。その「星」はやがて博士たちを約束の御子のもとに導きます(マタ2:1-2)。

メシアについて何も知らない古代メソポタミアの占い師が、将来イエスが生まれたときの印を世界に知らしめました。思いがけない所から、呪いではなく恵みがもたらされました。