ジョージ・サンダースは、米国のベストセラー作家です。2013年のシラキュース大学卒業式の祝辞で「私が後悔していることは?」という問いに答えるかたちで語りました。年配の人が己の後悔を若い卒業生に分かち合うことで、そこから何かを学んでもらおうというのです。彼は、まずありがちな話、例えば貧しかったことやひどい労働環境で働いたことなどを挙げましたが、それらについては大して後悔していないと述べました。彼の後悔は、親切を怠ったこと。親切にすべきだった時にできなかったことだと語りました。

使徒パウロは、「クリスチャンの生き方とは?」という問いの答えをエペソの教会に書き送っています。私たちなら、憲法改正に関する見解、避けるべき娯楽、教会生活の守り方などを、反射的に答えるかもしれません。しかし、パウロの返答は、当時の課題に限定されていませんでした。彼は、「悪いことば」を口にしない(エペ4:29)、無慈悲や憤り、ののしりを捨て去ることだと語ります(31節)。そして、当時の人々や私たちに向かって、「互いに親切に」しなさいと結論を述べています(32節)。その理由は、神がキリストを通して私たちを赦してくださったからです。

キリスト者のあるべき姿とは、と問われて各々信じることがあるでしょう。しかし「互いに親切にする」は、明らかにその答えのはずです。