12番目の選手
テキサスA&M大学のフットボールスタジアムには、「12番目の選手のホーム」という看板があります。フィールドの選手は各チーム11人ですが、試合の間、立ちっぱなしで応援する何千人ものA&Mの学生たちのことを、12番目の選手というのです。その起源は1922年、観客席にいたある学生が、選手が負傷したときに備えて控えて欲しいと言われたことにさかのぼります。彼は試合に出場しませんでしたが、協力を惜しまずサイドラインに立ちつづける姿に、チームが元気をもらったそうです。
宣べ伝えよう
陸上競技のリレーを見るのが好きです。アスリートに要求される体力、スピード、そして技と忍耐には、本当に驚かされます。しかしリレーには、ハラハラしながら注目する重大な瞬間があります。それは、次の走者にバトンを渡す瞬間です。一瞬の遅れや、ちょっとした失敗がレースの勝敗を分けるのです。
寄留者と旅人
自転車を止めて、ケンブリッジの地図を広げました。方角感覚の良い方ではないので、古い建物に囲まれた迷路のような道では迷子になりそうでした。私はイギリス人と結婚したばかりで、この地で、のどかに生活するはずでした。しかし実際は、流れ者のような気分でした。黙っていれば周囲に溶け込んでいても、口を開けばすぐ、アメリカ人観光客だとよそ者扱いされるように感じました。また、ふたりの頑固な人間が共に生活するのは、予想以上に難しいと気づき始めたころでした。
おばあちゃんのレシピ
多くの家には「我が家の味」があります。私は「客家(ハカ)」と呼ばれる中国系の民族に属していますが、客家には「算盤子(そろばんの珠)」と呼ばれる、ぜひ一度は食べていただきたい伝統料理があります。この料理で「我が家の味」を保持していたのは、当然のことながら祖母でした。旧正月に親族で夕食を囲んだ時はいつも、「この料理は覚えなければいけないね」と話し合ったものです。しかし、手ほどきを受けないまま月日が流れ、祖母はもういません。あのレシピは祖母とともに失われてしまいました。