思いがけないあわれみ
高校2年生の時のある金曜日、アルバイト先のボウリング場で夜遅くまで汚れたフロアをモップがけしました。清掃スタッフが急に病気で休んだからです。彼の欠勤について上司に連絡しませんでした。掃除ができていれば問題は無いし、彼を驚かせたかったからです。ところが大問題が起きました。翌朝、扉を開けるとボウリング場は水浸しで、ピンやスコアカード、トイレットペーパーがぷかぷか浮いていました。私は前夜、水を出しっぱなしのまま帰ってしまったのです。しかし上司は怒るどころか「頑張ろうとしたんだね」と笑顔でハグしてくれました。思いがけないあわれみでした。
最初にするべきこと
飛行機に乗ると離陸前に、安全に関するアナウンスがあり、機内の気圧が低下した場合、頭上の棚から酸素マスクが落ちると説明されます。そのときはまず自分が着用し、人に手助けをするのは、その後です。自分の意識がしっかりしていなければ誰も助けられないというのがその理由です。
最後の者が先になる
先日、飛行機に搭乗すると頭上の荷物置きがいっぱいで、最後尾の席の上に手荷物を入れることになりました。つまり、乗客全員が降りた後でないと、自分の荷物を回収できないわけです。しかし、席に座るとふと、主がなさったこと、という思いがよぎりました。「待っていてもどうということはない。むしろ、君のためになるよ」と言われたように感じて、笑ってしまいました。着陸後は、他の客の荷物を下ろしたり、客室乗務員の片付けを手伝ったりして時間を潰し、自分の荷物を取って降りる時には、航空会社のスタッフと間違えられ、また笑ってしまいました。
思いやりの力
介護する人が患者の気持ちを理解できるようにとエイジ・スーツが考案されました。それを着ると、見えにくく、聞こえにくく、動きにくくなり、40歳ぐらい年をとったように感じます。ウォールストリート・ジャーナル紙の記者ジオフレイ・フォウラーは、これを試した後こう記しました。「この苦痛を伴う忘れ難い経験は、単に加齢について教えてくれただけでなく、仮想現実を作る器具が、いかに自分以外の世界に対する認知力や配慮を豊かにするか、教えてくれた。」
神はご存じだ
アナは教会で悲しみを抱えた女性と知り合い、彼女の力になりたいと思いました。それで毎週待ち合わせて、話を聞いたり、祈ったりしていました。ところが、牧師はアナの行いを知らなかったので、その女性のケアにひとりの担当者をつけました。アナは牧師に認められたいと思っていたわけではありませんが、落ち込みました。 「私が何もしていなかったみたい」と私にこぼしていました。
人間らしさ
警察官は地域の安全のためにある種の権限を与えられていますが、その巡査は偉ぶりもせず、自分たちは「危機の中にいる人と共に働く人間」だと言いました。彼の謙遜な態度は、ローマ帝国の迫害に苦しんでいた仲間に向けられた使徒ペテロの言葉を思い出させます。
ヘリコプターの種
私の子どもたちは幼い頃、落ちてくる「ヘリコプターの種」をキャッチして遊びました。それは近所の家にある銀葉楓の種ですが、形がヘリコプターのプロペラに似ていて、春の終わりになると、くるくると回りながら落ちてきます。地面に落ちて新たな木になるためです。
仕え、仕えられなさい
マリリンは長い間病気で沢山の人の世話になっているので、どうすればお返しができるだろうと悩んでいました。ところがある日「人に仕えるだけでなく、人の奉仕を喜んで受け入れる謙虚さが増し加えられるよう、みんなのために祈りましょう」という祈禱課題を読みました。そして、借りを返さなくてはと思わずに、ただ心から感謝して、みんなに仕える喜びを味わってもらえればよいと気づきました。
慰めの手
看護師のメモに「患者あばれる」とありました。心臓手術の麻酔から覚めた後、アレルギー反応が起こりました。私はひどい状態でした。自分で呼吸管を抜いてしまわないように、腕は縛ってありましたが、身体が激しく震えて、そのひもを引っ張りました。ひどく恐ろしく、痛い経験でした。その中で、ベッドの右側にいた看護助手がそっと手を握ってくれました。それは思いがけない出来事でしたが、驚くほどホッとしました。私の身体は緩み、ひどい震えは止まっていきました。