細部に宿る神
ケビンとキンバリーにとって、ひどい1週間でした。ケビンは持病が突然悪化して入院しました。幼い4人の子どもは、コロナ禍で外出できず、ストレスがたまって限界でした。まともな食事を作れる食材は冷蔵庫になく、奇妙なことに、キンバリーは無性にニンジンが食べたくなりました。1時間後、玄関扉をノックする音がして、戸口に夕食を手にしたアマンダとアンディがいました。しかも、ニンジン入りです。
ベイビーボーイ
その子の名前は1年以上も「ベイビーボーイ」でした。病院の警備員が、袋に入れられ駐車場で泣いていた生後数時間の新生児を発見したのです。ほどなく、社会福祉事務所の仲介で、ある夫婦が引き取り、グレイソン(仮名)と呼びました。養子縁組が法的に認められて、ようやく、グレイソンが彼の本名になりました。今では、明るくおしゃべり好きな幼児です。悲惨な状態で捨てられていたとは誰も想像しないでしょう。
愛してくれますか
リンリンは10歳の女の子。養女になりましたが、不安でした。孤児院では些細(ささい)な失敗でもひどく罰せられました。養母である私の友人に「ママ、私のこと好き?」と聞き、「もちろん」と答えると、「もし失敗しても好きでいてくれる?」と、さらに尋ねたそうです。
空の鳥
夏の朝、外に出ると笑顔の隣人が小声で呼びました。「何?」すると、彼女は風鈴を指さしました。小さな碗のような形状のわらが乗っかっています。「ハミングバードの巣よ。ひながエサを持ってくる母鳥を待っているわ」。上を向いた小さなくちばしが2つ見えました。感激してスマホで写真を撮ろうとすると、彼女は「近づきすぎてはダメ。母鳥が驚くから」と言いました。その日以来、私たちはハミングバードの親子を遠くから見守っていました。しかし、1週間ほどすると、鳥の親子はどこかに行ってしまいました。守ってくれる人はいるでしょうか。
本物の癒やし
学校中の誰もが気さくでスケートボードのうまいジャックに憧れていました。ハーフパイプで宙を舞い、片手でボードをつかみ、もう一方の手でバランスを取っている時、気分は最高でした。そんな彼が、地元の教会に通い始め、やがてイエスに従う決心をしました。実は、家庭に深刻な問題があり、ドラッグで苦しみを和らげていたのです。回心後、しばらくは順調でした。しかし後年、再び薬物に手を出し、適切な介入や治療につながることなく、結局、過剰摂取で落命しました。
名前の力
ランジットは、インドのムンバイで路上生活している子供たちに歌を贈りました。ひとりひとつのメロディーにそれぞれの名前を入れ、彼らに教えました。自分の名前と良い記憶が結びついてほしい、自分が大切な存在であることを知ってほしいと思ったのです。彼は、愛を込めて名前を呼ばれる経験の少ない子たちに「リスペクト」という贈り物をしました。
心を育む
スコットランドのグリーノックの小学校では、産休中の教員3名が2週間ごとに赤ちゃんを連れて来て、児童たちと交流します。児童たちは赤ん坊と遊ぶことで共感や思いやりを学びます。一番良い影響を受ける児童は、個別指導が必要な「ちょっと難しいタイプ」の子だといいます。子どもの世話をすることは大変だと知り、人を思いやることを学ぶのです。
避け所
丈夫で大きな窓と分厚い石壁の素敵なホテルに夫婦で泊まったことがあります。海沿いのその場所を、ある日の午後、嵐が襲いました。海はしけて、荒波が怒った鉄拳のように窓に打ちつけました。しかし、私たちは平気でした。ホテルの土台は強固で、壁も頑丈だからです。外は嵐が吹き荒れる中、私たちの部屋は、「避け所」でした。
愛してすがる
ザックは、お茶目で賢く、人気者でしたが、人知れずうつの症状と闘っていました。そして、15歳で自死。母のローリは「才能豊かな人気者が、なぜそんな所まで追い詰められるのか理解できない。本当に悔やまれる」と語りました。神に悲しみを注ぎ出すときは、まるで時が止まったような静けさで、息子の自死の後に感じた深い悲しみは、それまで経験した悲しみとは次元が違ったと言います。しかし、ローリとザックの家族は、神によりかかったり、人から助けてもらったりして、強められていきました。今は、うつ状態の人たちに寄り添う活動を続けています。