ありのままのその人を
オリバー・クロムウェルは17世紀の軍人で、イングランド共和国の初代護国卿でした。当時、国の高官が肖像画を描かせるのはよくあることで、見栄えのよくない部分を描かないことも普通でした。しかし、クロムウェルは自分を良く見せたいとは思わず、「イボも含めて、ありのままの私を描きなさい。さもなければ支払いはしません」と告げました。画家が従ったのは明らかです。完成したクロムウェルの自画像には大きなイボが描かれています。現代のSNSの写真なら修正されていたでしょう。
美しい足
ジョン・ナッシュは先駆的な数学の研究により1994年のノーベル経済学賞を受賞しました。それ以来、彼の理論は競争や競合の精神力学を理解するために世界中の企業に用いられています。彼に関する書籍と映画は、ナッシュが「美しい心」を持っていたと語りますが、それは、彼の脳が美しい形状をしていたということではありません。彼の脳が美しい行為をしたという意味です。
神によって力づけられた
作家志望でホテルの皿洗いをしていたラングストン・ヒューズは、1925年、憧れの詩人バチェル・リンゼイが宿泊していると知り、自作の詩を書いた紙を彼の部屋の扉の下からそっと差し入れました。リンゼイは、その詩を絶賛し、朗読会で披露しました。ヒューズはリンゼイに励まされて奨学金を得て大学に入り、成功の第一歩を踏み出しました。
友だちに語る
高校生の頃、私はキャサリンと仲良しで、電話をしたり、自由研究を一緒にしたり、乗馬をしたり、互いの家に泊まったりすることもありました。
手本にならって
パンデミックの最中、24時間ズンバがオンラインで開催され、世界各地で何十万の人々が、色々な国のインストラクターについて同時にフィットネスをしました。なぜ、そんなことができたのでしょう。ズンバは1990年代半ばにコロンビアで生まれましたが、インストラクターの言葉を介さず、その動作だけを見てついていくエクササイズなのです。
星々への挑戦状
イタリアの詩人F・T・マリネッティは、20世紀初頭、未来派という前衛芸術運動を起こしました。それは、過去の芸術や伝統的な美の概念を否定し、機械を礼賛しました。1909年に発表した「未来派宣言」は、女性の侮辱、暴力の肯定、戦争の栄光を主張し、「我らは世界のいただきに立ち、空の星々へ再び挑戦状をたたきつける」と締めくくりました。
関係修復
エイモスは高圧的で自己主張が強く、ダニーは気弱で内向的でした。この2人の天才が、どういうわけか親友になり、10年間、苦楽を共にして研究しました。その研究は、後年ノーベル賞を受賞します。そんな未来を知る由もないダニーはエイモスの自分勝手さに疲れて絶縁を宣言しました。その3日後、エイモスは末期ガンで余命半年だと告げられたのです。ダニーは胸が張り裂けそうな思いで言いました。「僕たちは友人だ。君が何と言おうとも」
賢明な助言
パリのノートルダム大聖堂で、2019年4月15日、火災が発生し、尖塔が焼けて崩落しました。次の懸念は鐘楼です。巨大な鐘を支える木製の枠が焼け落ちると連鎖的な崩落を招き、大聖堂全体が焼失するかもしれません。
私たちは一つ
先祖伝来の農地を銀行に取られた数年後、デビッドは、その土地が競売にかけられると聞きつけ、大変な苦労をしてお金を工面すると、200人の村人が集う会場に駆けつけました。彼が最初の指値を入れましたが、それは高くありません。大丈夫でしょうか。デビッドはかたずをのんで、せり上げを促す声を聞いていましたが、誰一人、最後まで声を上げませんでした。村人は皆、己の事業の拡大ではなく、デビッドの事情を優先させたのです。